「BODY SPA 西葛西店」~静かなる荒波に飲み込まれて~
心のエンジンがオーバーヒート気味だ。都会の喧騒と、終わりの見えないタスクの山。脳の回路がショートする前に、どこか遠くへ逃避したい。気づけば私は、東西線に揺られていた。目指すは西葛西。ここは、下町の情緒と異国情緒が混ざり合う、不思議な停泊地だ。
駅前の喫茶店で、スマートフォンの画面に広がる「癒やしの海図」を広げる。 今回は、以前から気になっていた「BODY SPA 西葛西店」への乗船を決めた。決め手は、事前情報で耳にしていた「早乙女」という名のセラピスト。そして、何やら穏やかならぬ響きを持つオプション「元気玉」の存在だ。
出航前の微かな揺れ
予約の電話を入れる。受話器の向こうから聞こえる声は、波一つない凪(なぎ)のように穏やかだ。この時点で、私の心のささくれが少しだけ削り取られていく。
お店は、街の風景に溶け込むように佇んでいた。新橋のようなギラついた迷路ではないが、やはり扉を開ける瞬間は、未知の航路へ漕ぎ出す航海士のような緊張感が走る。
「いらっしゃいませ」
迎えてくれたのは、期待を裏切らない、いや、期待を大きく超えてきた早乙女さんだった。 おっとりとした口調、涼しげで端正な顔立ち。まさに「綺麗なお姉さん」を具現化したような存在だ。彼女の周りだけ、時間の流れがゆっくりとしたローカル線の待ち合わせ時刻のように停滞している。
寄港地:静かなるトリートメント
個室へ案内され、施術が始まる。 まずはオイルマッサージ。彼女の指先が肌を滑る感覚は、穏やかな入江を滑進するヨットのようだ。おっとりとした彼女のキャラクターそのままに、急かすことなく、丁寧に、一箇所ずつ疲れを解きほぐしていく。
「お疲れ、溜まってますね」
その一言が、硬く閉ざしていた私の心のハッチを緩めていく。彼女との会話は、まるで波打ち際での貝殻拾いだ。派手さはないが、一つ一つに温かみがある。私は、完全に彼女が操る船の乗客になりきっていた。
クライマックス:禁断の「元気玉」投下
そして、旅はいよいよ最終目的地、オプションの「ソケイ部リンパマッサージ(元気玉)」へと差し掛かる。
これまで穿いていた紙パンツ。それは、この神聖な旅における最後の防波堤だった。しかし、彼女は「失礼しますね」と、まるで夕日を眺めるような穏やかなトーンで、その防波堤をさらりと取り払った。
全裸という無防備な姿。そこへ、彼女の温かい手のひらが、禁断の領域へと踏み込んでくる。 「元気玉」という力強い名称とは裏腹に、そのタッチはどこまでも優しく、そして容赦ない。
ソケイ部を丹念に流されるたびに、私の意識はホワイトアウトしそうになる。彼女の指が、あるいは手のひらが、意図的なのか、はたまた偶然の産物なのか、私の「息子」に微かに、しかし確実にかすめていく。
(あ、当たっている……)
彼女の表情を盗み見ると、そこには相変わらずおっとりとした、綺麗なままの微笑みがある。そのギャップが、私の理性を激しく揺さぶる。 静かな海だと思っていたのに、海面下では巨大な渦が巻いている。私の息子は、その渦に抗うこともできず、ぐんぐんと、力強く天を仰ぎ始めてしまった。
終着駅:浄化された航海
「お疲れ様でした。スッキリされましたか?」
施術を終え、彼女が差し出してくれたお茶を飲みながら、私はようやく現世へと帰還した。 あんなに激しく「立ち上がって」いた息子も、今は満足げに眠りについている。紙パンツを脱ぎ去り、すべてをさらけ出した後の開放感は、まさに長旅を終えた後の港の朝日に似ていた。
おっとりした彼女の「静」の接客の中に、突如として現れる「元気玉」という「動」のトラップ。 西葛西の静かなビルの一室で、私は確かに、魂の洗濯を済ませたのだ。
「また、この航路に戻ってこよう」
そう心に誓い、私は少しだけ足取り軽くなった自分を感じながら、再び東西線のホームへと向かった。 料金以上の価値がある、実にエキサイティングな「ひとり旅」であった。